日本政府は12月23日、人工知能(AI)の研究開発および活用に関するAI国家戦略となる「AI基本計画」を閣議決定した。産業用ロボット分野での競争力を基盤に、医療、ライフサイエンス、金融、行政など幅広い分野でAIの社会実装を後押しし、経済成長と社会課題の解決につなげることを目的としている。計画の基本構想では、「信頼できるAI」を追求し、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指すことを掲げ、イノベーション促進とリスク対応の両立、柔軟かつ迅速な政策対応(アジャイル)、内外一体での政策推進を原則として進める方針が示された。
基本方針としては、AIを「使う」「創る」「信頼性を高める」「AIと協働する」の4つを柱とし、特にAIの信頼性確保に向けては、安全性や公平性を担保するガバナンス体制を構築するとともに、国際的なルール形成や連携を進め、グローバルサウス諸国との共創・協力モデルの構築も視野に入れている。また、「AIと協働する」社会の実現に向けては、産業や雇用、制度、社会の仕組みを継続的に変革し、AIを使いこなし、創り出す人材の育成・確保を進めるとともに、人とAIの役割分担を模索しながら、AI時代を生き抜くための人間力を高める環境整備を行うとしている。これに関連し、知的財産の保護と利活用の両立を図りつつ、コンテンツホルダーへの適切な対価還元や、雇用への影響を踏まえた教育・リスキリング支援も進める方針だ。
令和7年9月12日に総理大臣官邸で開催された人工知能戦略本部(第1回)には、石破 茂内閣総理大臣をはじめ関係閣僚が出席し、分野別のAI活用について議論が行われた。厚生労働省を代表して福岡厚生労働大臣は、AIの活用が国民の健康と暮らしの向上に不可欠であるとの認識を示し、医療分野では画像診断支援AIがすでに保険診療で活用されているほか、将来的には熟練医と遜色ない手術支援ロボットの普及により、地域差のない質の高い医療の実現が期待されると述べた。また、AIによる創薬プロセスの効率化や成功率向上にも大きな可能性があるとして、研究開発を積極的に推進していく考えを示した。
さらに政府は、AI分野の研究開発力を高める観点から、国際共同研究の推進や研究環境の整備を通じ、外国人高度人材の活用にも触れており、国内人材育成とあわせて多様な人材が活躍できる基盤づくりを進めるとしている。AI基本計画は、医療・ライフサイエンス分野を含む幅広い領域での社会実装を通じ、日本の国際競争力を高めるとともに、安心・安全なAI社会の実現を目指すものと位置付けられている。

